概説 1982年、米国でハンバーガーによる大腸菌O-157集団食中毒が世界で初めて発生し、その後、世界各地で報告されました。日本では1990年、埼玉県浦和市(当時)の幼稚園で、井戸水汚染による事件で死亡者2人を出したのが最初です。1996年には全国で爆発的発生がみられ、とくに堺市では小学校給食がO-157に汚染したため、1万人を超える患者が発生しました。大腸菌O-157は、ベロ毒素を産出し、血管内皮細胞や腎尿細管、脳などに強い毒性を示します。感染経路は、ウシ、ヒツジ、シカなどの反芻(はんすう)動物、患者や保菌者からの経口感染で、潜伏期は2〜14日です。
症状 水様性下痢と腹痛で発症します。発熱、嘔吐、血便、かぜ症状もみられることがあります。発症後1週間頃に、患者さんの約10%に溶血性尿毒症症候群(HUS)が続発します。とくに乳幼児、老人の意識障害、けいれん、昏睡などの重篤(じゅうとく)例では死亡することもあります。
一般的な治療法 安静と水分補給、消化しやすい食べ物を与えます。経口摂取が不可能な場合は、輸液を行います。抗菌剤(ホスホマイシン?ニューキノロン)と乳酸菌製剤の投与が行われます。
●標準治療例
下痢、嘔吐が著しい場合、脱水の改善に――
乳酸化リンゲル 1回500ml1日2〜3回点滴静脈内注射
乳酸菌製剤の内服(ビオフェルミン散3〜9g)
小児の場合は――
ホスミシンドライシロップ 1回10〜30mg/kg1日3〜4回
ビオフェルミン散 1回0.5〜1g1日3回
蠕動(ぜんどう)抑制剤の止痢(しり)剤の使用は禁忌(きんき)です。
生活上の注意 HUS患者では、無尿時の腹膜透析や血圧の管理が必要です。腸炎患者さんの予後はいいですが、HUS患者さんの約3%は死亡します。