概説 破傷風は嫌気性菌(けんきせいきん)の破傷風菌(clostridium tetani)によってつくりだされる神経毒による神経麻痺症候群です。破傷風と診断するには菌の存在と毒素産生を促す局所病変と毒素に免疫のないことの3条件が必要です。
破傷風菌はグラム陽性桿菌(かんきん)で、胞子の形で広く土壌に分布しています。傷口から体内に侵入するので、庭いじりなどで気づかない傷でも発症することがあります。潜伏期は3〜21日で、ヒトからヒトへの感染はありません。
症状 肩こり、舌のもつれ、顔がゆがむといった症状で始まり、多くは開口障害に発展します。次第に、嚥下(えんげ)?発語障害、歩行障害が現れ、その後けいれん発作が起こり、全身発作に進展します。特徴的な横紋筋(おうもんきん)の硬直(背筋の強直性けいれん〈opisthotonus〉、腕の屈曲内転、手をつよく固める)、腱反射の亢進(こうしん)、病的反射はこの時期に観察されます。意識ははっきりしています。自律神経障害として血圧の変動、頻脈(ひんみゃく)、高体温、不整脈、発汗がみられます。
診断 白血球、とくに好中球の増加、血清クレアチニンが上昇します。傷口からの破傷風菌の分離を行いますが、必ずしも分離されない場合も多くあります。そのため特徴的な臨床症状から判断されます。
一般的な治療法 まず傷口のデブリドマンを徹底して行います。早期に破傷風ヒト免疫グロブリンを筋内注射(筋注)または静脈内注射(静注)します。必要に応じてペニシリンGやテトラサイクリン系抗生剤の投与を行い、けいれんに対しては抗けいれん剤(ジアゼパム)を使用します。また、破傷風の発病では免疫を獲得しないので、回復後には必ず破傷風トキソイドを接種しておきます。
●標準治療例
[1]外科的処置:感染源とみられる創の切開、デブリドマンして創部を開放する。
[2]テタノブリン(250単位) 5,000単位以上筋注
[3]創傷部の2次感染に――
ペントシリン注 1回2g1日3回点滴静注
生活上の注意 致死率は10〜90%と報告に幅がありますが、高齢者においては予後が悪くなっています。また、外傷の処置から発症までの期間が短いほど、症状が出現して全身けいれん発作の出現までの日数が短いほど予後が悪いです。