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アトピー性皮膚炎
2008-3-15/転載

文字 

概説 遺伝的な素因をもとに、慢性的に湿疹病変を繰り返す皮膚の病気です。カサカサと乾燥した皮膚にも特徴があります。

1)アトピー性皮膚炎のアレルギー的側面
 アトピー性皮膚炎の症状は慢性の湿疹だとすると、症状としては慢性のかぶれと同じということになります。しかし、病気の成り立ちを考えると単なるかぶれとはいえないことがわかります。すなわち、アレルギー性のかぶれはT細胞が主役の遅延(ちえん)型アレルギーであったのに、アトピー性皮膚炎の7〜8割の方ではIgE(免疫グロブリンE)という抗体が高いという特徴があります。IgEは、肥満細胞とともに即時型アレルギー反応の主役です。皮膚における即時型アレルギーの反応はじんま疹として表現されるはずですが、アトピー性皮膚炎の症状はじんま疹の症状とは明らかに異なります。アトピー性皮膚炎においては、じんま疹ではなく、かぶれと同様の症状を示しながら、即時型アレルギーと関連する検査値異常を示すところに大きな矛盾があったわけです。アトピーという言葉は「奇妙な」という意味ですが、この点でいえば確かに奇妙だったかもしれません。ただ、現在では、この矛盾は徐々に説明がつくようになり、アトピー性皮膚炎におけるアレルギー性炎症は、即時型と遅延型アレルギーの両者が入り混じった反応として起こっていると考えられています。

2)アトピー性皮膚炎の非アレルギー的側面
 アトピー性皮膚炎はアレルギー的側面以外にもう1つ重要な側面があります。それは、皮膚のバリア機能の低下という側面です。これは、皮膚の乾燥という症状と関係しているものです。皮膚の一番上には角質層という薄い膜がありますが、この膜のおかげでわれわれは内側の水分を保ち、外からの刺激にも耐えられるわけで、この膜がなければ生命の維持は困難なくらい重要なものです。角質層の中でバリア機能に重要なのはセラミドという脂質ですが、アトピー性皮膚炎の方の角質層ではセラミドが減っていて、バリア機能が落ちていることがわかっています。したがって、アレルギー炎症云々の前に、むしろこのバリア機能の低下が根本問題で、その結果、通常は入ってこない物質が入ってくるから異常なアレルギー炎症が生じるという考え方もできます。現在のところどちらが原因か結果かはまだわかりませんが、これは、アトピー性皮膚炎における遺伝的な素因は、IgEを産生しやすい素因なのか、セラミドが少ないという素因なのかという根本的な問題にもつながってきます。

症状 普通は幼小児期に症状が出てきて、その症状は年齢とともに変化していきます。乳幼児期には顔面、頭部などにジュクジュクした湿疹を生じますが、学童期には肘、膝の裏などを中心にカサカサした湿疹がみられるようになります。かゆみも強く、引っ掻き傷がたくさんみられます。
 合併症として、IgEが病気に関係する他のアトピー性疾患、すなわち喘息(ぜんそく)やアレルギー性鼻炎を伴うこともあります。また、皮膚のバリア機能低下の結果、とびひ、みずいぼ、単純ヘルペス(カポジ水痘様発疹症)など様々な皮膚の感染症がみられます。眼の合併症も重要で、眼のまわりの湿疹を繰り返し叩いたり擦ったりする刺激により、網膜剥離(もうまくはくり)や白内障が生じます。

診断 繰り返す慢性の湿疹病変と皮膚の乾燥症状に加えて、家族歴などをあわせて診断します。血中のIgEの値、あるいは特定の物質に対するIgE抗体の存在(特異的IgE抗体)も参考に測定することはありますが、これは診断に必須のものではなく、あくまでも参考です。いわゆる原因検索については多くの誤解があります。まず、アトピー性皮膚炎はいろいろな刺激に反応しやすい素因がもとになっている皮膚の病気であって、特定の原因物質によって起こる単なるかぶれではないことを理解していただく必要があります。多くの方が求める原因は1つのものですが、アトピー性皮膚炎においては、かぶれの時のように特定の原因物質を突き止めれば解決というわけにはいきません。アトピー性皮膚炎で生じやすいアレルギー炎症の悪循環を生む誘因となるものは、ダニ、ハウスダスト、細菌など様々なものがあります。これらは、アトピー性皮膚炎の悪化の因子ではあるけれども、特定の原因ではないという認識がむしろ必要です。したがって、血液検査で特異的IgE抗体が陽性の場合も、それが「原因」というより、悪化因子の可能性の1つとして参考程度に考えて下さい。

一般的な治療法 皮膚に炎症が生じている時には、アレルギー性炎症の悪循環が起こって炎症という火事が広がっているわけですので、これを断ち切るには抗炎症作用と免疫抑制作用を備えた副腎皮質ステロイド薬の外用により早期に消火する必要があります。これで火事による皮膚のダメージを最小限に食い止めることができます。炎症が鎮まれば、当然、消火のための薬剤をずっと使用する必要はありません。こんどは、バリア機能を強くして、刺激が加わっても跳ね返すように保湿剤外用を中心にしっとりした皮膚を保つスキンケアが大事です。
 アトピー性皮膚炎は遺伝的な病気なので、何か1つ行えば治ってしまうという根本治療はありません。しかし、遺伝的な病気だから一生治らないというのは大きな間違いです。皮膚のバリア機能だけをとっても年齢とともに強くなっていきます。
 アトピー性皮膚炎は年齢とともに自然によくなっていくのがむしろ特徴である病気です。いつの時期に症状が目立たなくなるかということについては、個人差が大きく、学童期までに自然に落ち着く場合が多いのですが、一部の方は成人になったあとも症状が続くことがあります。
 しかし、成人の方でも年齢とともに症状は軽くなっていきます。ただし、よくなったといっても、刺激に敏感であるという素質はある程度残ります。例えば洗剤荒れなどの手の湿疹は、ある閾値(いきち)を超えれば誰にでも起こりえますが、アトピー性皮膚炎の素質をもった方ではこういった湿疹が起こりやすいということはあります。したがって、大人になって手に湿疹が出やすいという方の多くは、小さい頃アトピー性皮膚炎があった方です。
 いずれにしても、アトピー性皮膚炎は年齢とともに症状が自然に目立たなくなる病気であることは間違いありませんので、決して根本治療という甘言に惑わされず、また対症療法と卑下せずに適切な外用療法を中心とした治療を行って、ごく普通の生活を行っていくことが肝要です。

●標準治療例
1)炎症のある部位
[1]小児例
 ステロイド薬外用
 顔面:アルメタ軟膏以下の強さの薬剤  1日2回
 体幹?四肢:メサデルム軟膏以下の強さの薬剤  1日2回
 抗アレルギー薬内服
 セルテクトドライシロップ 1回量体重1kgあたり0.5mg  1日2回

[2]成人例
 顔面:プロトピック軟膏外用  1日2回
 体幹?四肢:症状に応じた強さのステロイド薬外用

2)乾燥症状
 ヒルドイドソフト外用  1日2回

[副腎皮質ステロイド薬外用の注意]
1)症状の程度に応じて強さの違うステロイド薬を使い分ける。
(理由)
 急性期の接触皮膚炎の治療などは、むしろ比較的強めのステロイド外用薬で早期に治すことが求められます。しかし、アトピー性皮膚炎のような慢性疾患においては、症状に応じて最小限の強さの外用剤をうまく使用していくことが副作用を少なくする上で最も重要なことです。

2)同程度の症状であっても、部位によってステロイド薬の強さを使い分ける。
(理由)
 例えば吸収の面だけを考えても、顔面は手の平?足の裏に比べると1桁から2桁吸収がよい場所です。すなわち、効果も副作用もでやすい場所です。皮膚は部位によりこういった特殊性がありますから、決して自分の判断でいろいろな場所に塗ったりしないようにして下さい。

生活上の注意 食事は基本的には制限する必要はありません。ただ、多くはありませんが、とくに2歳以下では食べ物が症状の悪化に関係することはありえます。その際、特異的IgE抗体が陽性というだけで制限するのではなく、その食べ物を除去してよくなること、食べると悪化することを必ず実際に確認してから制限を行う必要があります。
 ほこり、汗などの汚れや細菌感染は炎症の悪循環の引き金になることがあるので、入浴し石鹸を使って汚れを落とすことはスキンケアの上で重要です。その際、擦りすぎないように注意し、入浴後は保湿剤を塗って皮膚のバリアを強くしておくのがよいでしょう。
 眼のまわりは決して叩いたり、擦ったりしないようにすることは大変大事です。網膜剥離や白内障など眼の合併症予防のためにも、引っ掻くもとになる顔面の皮疹はきちんと治療しておく必要があります。いろいろな皮膚の感染症も生じやすいため、いつもと違う皮疹がでていたら早めに皮膚科に相談するのがよいと思います。



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