概説 アトピー性皮膚炎の患者さんが大変多くなっていますが、最近、重症の患者さんに、目の病気を合併する人が多いことがわかっています。その原因はよくわかっていませんが、増加傾向にあり注目されています。以前は小児の病気と思われていましたが、最近は成人にもみられ重症化しています。
アトピー性皮膚炎の患者さんがかかりやすい目の病気は、白内障、網膜剥離、角結膜炎と春季カタル、円錐角膜があります。なかには著しく視力を損なう病気、失明に至るもの、それが若い時から急速に進むものがあるので、日頃から皮膚症状のある人は目の定期的な検査を心がけて下さい。
症状 アトピー性眼症でみられる症状は、アトピー性皮膚炎に合併した目の病気の、それぞれのものです。
白内障
水晶体の白濁による眼のかすみと視力低下。
網膜剥離
剥離した部分の網膜の機能低下や消失による、飛蚊(ひぶん)症や視野欠損、視力低下。
角結膜炎?春季カタル
アレルギー性角結膜炎の強い時と同じ症状で、結膜の充血、腫れ、めやに、強いかゆみ、ゴロゴロした痛み、眼瞼(がんけん)のかゆみ?充血?腫れ。
円錐角膜
本来、ドーム状の半円球型をした角膜の頂点が鋭く前方に突出し、円錐状にとがってくる病気で、アトピーの重症な人にも合併することが知られています。かなり凸凹した乱視が強くなったり、角膜の突出部が白濁して視力が低下します。
診断 かゆみと、汗がたまったり、こすれあう部分にカサカサした皮膚がみられるアトピー性皮膚炎の人で、前述の症状を自覚したら、アトピー性眼症を疑って眼科を受診して下さい。
角結膜炎?春季カタルや円錐状角膜では、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で、スリット状の光を斜めに投射して前眼部を観察します。円錐角膜や白内障?網膜剥離では、さらに屈折や視力検査をします。
白内障と網膜剥離ではさらに散瞳して、眼底を含め、眼球内部を詳しく検査します。あわせて眼圧も測定しますが、ステロイドの内服や軟膏?点眼をしている場合、ステロイド緑内障の人は眼圧が上昇するので必ず検査します。
一般的な治療法1)角結膜炎?春季カタル?アトピー性眼瞼皮膚炎
[1]軽 症
抗アレルギー剤(インタール?リザベン)点眼 1日4〜5回 1回1〜2滴
抗ヒスタミン剤(リボスチン)点眼 1日4〜5回 1回1〜2滴
[2]中等症
ステロイド剤点眼 1日4回(0.1%フルメトロン〜0.1%リンデロン) 1回1〜2滴
[3]重 症
ステロイド眼軟膏(ネオメドロールEE、リンデロン) 1日3〜4回
注)眼瞼皮膚も皮膚科用軟膏では吸収がよすぎるし、目に入ると刺激も強いので、眼軟膏にする必要があります。
2)白内障
10代の頃から水晶体の混濁が急速に進行することがあります。長期または大量のステロイド治療での合併症として加わることがあります。原因はよくわかっていませんが、かゆみをこらえるため目をたたいたり、こすり続けていることも一因と考えられています。
治療は、一般の白内障と同じで手術をします。同時に眼内レンズ移植も行いますが、術後にも目を強くこすると眼内でレンズがずれることや網膜剥離が起こりやすいため、眼内レンズを入れずに術後の視力を眼鏡やコンタクトレンズで矯正することがあります。
3)網膜剥離
日本人では、10〜30歳代のアトピー性皮膚炎の人に、裂孔原性網膜剥離を合併する人が増えています。かゆみに耐えるために目を強く押さえたり、たたいたりすると起こりやすくなるので注意して下さい。網膜剥離は失明につながることが多いので、速やかな手術治療が必要です。また、再発しやすいので術後も継続的に受診して下さい。
4)円錐角膜
多くの場合、ハードコンタクトレンズによる視力矯正で様子をみます。進行したり、春季カタルが強く、コンタクトレンズが使えない場合、手術治療をします。
手術
(a)角膜熱形成術
突出した角膜にアイロンをかけるようにして、平面を作り、コンタクトレンズがのせられるようにします。
(b)角膜移植術
角膜が薄くなって破れるような時に行います。
生活上の注意 目のかゆみを我慢するかわりに、眼球をたたくようなことが重篤(じゅうとく)な視力障害を招くこともある目の病気を発生させるので、専門医に早くから相談して適正な治療をしましょう。また、少しでも目の異常を感じたら、早く受診し、定期検査を受けて下さい。また、ステロイドなど、強い薬の副作用を恐れるあまり、症状を重くして強い薬を使わざるをえなくならないように十分な説明を受けて、正しく治療を続けて下さい。